Little AngelPretty devil 〜ルイヒル年の差パラレル

    閑話 〜何ということもない冬のお休みの。
 




  ――― なあなあ。最近メグ姉ちゃん、凄っげぇ綺麗になってねぇか?


本来だったら明日が“成人の日”で、
この日曜を挟んだ週末こそが三連休だったはずの月半ば。
ハードディスクへ録り溜めしてあったNFLの流し観なんてもの、
ソファーに寝転がって、リモコン片手にのんびりと堪能していた昼下がり。
リモコン争奪戦に負けた腹いせか、
わしわしとこっちの腹の上へとまたがって来ながら、
あまりに唐突なこと、話題に乗っけて来たのは、
今さっきまで観戦していた○イトリオッツのゲームを、
もっかい観たかったらしいおチビさん。
日頃から人間観察には鋭いところのある子だが、
そういう艶っぽい話題は秘して語らずとし、
妙に大人びたポリシーみたいなもん、守ってやがった筈だのにな。
一端の紳士としてのモラル云々というよりも、
そういうネタを囃し立てる行為がガキっぽく映るから、って順番なんだろうけど。
子供ほど背伸びしたがり、ジジィほど若ぶるだろう?
その伝で言やぁ、いきなりガキっぽく振る舞いやがったのは…もしかして。
さてはガキの振りをしてぇからって話題への枕(ツカミ)かなァと。
ついついそこまでの先読みをしてしまう葉柱だったのは、

  「スキーに行きてぇって“おねだり”なら聞かねぇからな。」
  「まだ何にも言ってねぇってよ。」
  「う…っ。」

フライングだったらしいです、お兄様。
(笑)

  「そか。さては、メグ姉ちゃん、斗影兄ィとスキー行ったなvv」
  「すいません。それ、他所で口外しないで下さい。」

俺の口からバレたと判った日にゃあ、
メグにタマ潰された上で、兄貴に殺されますから…と。
これも差し上げますと、スリムなリモコンを差し出せば、
えへへぇ♪と得意げに笑って受け取り、
さっそくのこと、デッキへ向けての操作をして見せる。
こっちの腹へと馬乗りになってんの、
そのまま見上げた横顔は、相変わらずに繊細な美人で、
明るい色合いの金髪に、ガラス玉みたいな金茶の眸。
いかにも欧米人のようなってんじゃなく、
質のいいロウソクみたいに、
奥深いところへ沈んでる白を透かしてるみたいな、抜けるような色白の肌に、
お人形さんみたいに可憐な方向でバランスの取れた、
いかにも細っこい身体つき。
これでも結構背丈は伸びたよな。
知り合ったばかりの頃は、
片手でひょいっと後ろ襟掴み上げるなんてことも出来たのが、
今はさすがにそれは無理。
襟が二重になってる小じゃれたデザインシャツと、
一丁前にツィードの、
ベストスーツっぽいアンサンブルがよくよく似合いの、
背条をぴんと伸ばした、毅然とした姿勢をいつもいつも崩さない子で。
隙を見せるのが癪だからってのが見え見えなんだが、
「…えへへぇvv」
お目当ての選手の、そりゃあ見事だったタッチダウンのリプレイへ、
見るからに嬉しそうな顔をして。
今のって、インターセプトしたラインバッカーからして凄げぇよななんて、
「判ーかったから、人の腹の上で踊るな跳ねるな。」
アメフトに限ってだけは、年齢相応の子供の顔をしやがんのな、お前。
手を伸ばしたら、リモコンを奪られるとでも思ったか、
いやいやと身を逸らして逃げるので、
「そうじゃねぇよ。」
ちょいちょいと手招きすると、疑わしげな上目遣いなんかしやがって。
そんな色っぽい顔どこで覚えた…じゃなくて。
よそで俺以外の有象無象へ見せんじゃねぇぞ?
「うぞーむぞー?」
何それ? なんて、小首を傾げる。
妙なことに詳しいくせして、妙なところでぼこぉっと疎い。
「詰まんねぇ奴ら全般のことだ。」
「ふ〜ん。」
さすがヤンキーだな、漢字だけ詳しいの。
うっせぇな。お前こそ、PC用語ばっか詳しいだけじゃんか。
いーんだもん。古語なんてのは高校生で習うまで知らなくても。
何が“古語”だ。
「よその誰へもそんな美味しい顔すんじゃねぇ。
 そう言やいいのに“うぞーむぞー”なんて持ち出してよ♪」
「う…っ。////////」
この応用力の素早さ素晴らしさよ。
言葉に詰まった葉柱の、渋〜いお顔をもっと間近で見たかったのか、
ぱふんと胸板へ伏せて来た小さな肢体の、何とも言えぬ柔らかさ。
毅然としてるのが“よそゆき”ならば、
こうまでの傍若無人ぶりは…身内へならではの“甘え”であるらしく。
「〜〜〜。////////」
「どした?」
赤い顔なの、妙に嬉しそうに眺めやり、
ダメ押しにと頬っぺをスリスリvv
懐ろへ擦りつけてやる小悪魔っぷりをご披露すれば。
「お前〜〜〜。///////」
何をどこまで判っていての所業だか。
まま、これ以上怒らせてもなと、
そこは切り替えも素早い今時の坊や、

  「スキーには行かないってのはサ、ルイがすべれねぇからか?」

それともゲレンデの寒さで冬眠モードに入るからか? なんて、
いきなり話題をすり替えて差し上げれば、
「すべれねぇたぁ、お言葉だな。」
その擦り寄り方にあたふたしたものの、
やっとのこと、届く範囲に来た金髪頭、
長い指にてもしゃもしゃ掻き回すようにして撫でながら、
「バイクと要領は似たよなもんだ。」
これでも高校上がるまでは毎年正月はゲレンデで過ごしたもんサと
吹くこと吹くこと。
「けどまあ、高校に上がった頃にゃあブームも下火で、
 それにアメフトの試合は冬が忙しいからな。」
「観戦すんのが、だよな?」
気に入らない付け足しを忘れない坊やへ、
「お前こそどうなんだよ。」
「何が?」
夏場はやれ海だプールだ、
合宿所の高原じゃあキャンプみたいだとはしゃぎまくりなくせに、
「冬場にどっか連れてけって言い出したことねぇじゃねぇか。」
「ああ、だって…。」

  『それにアメフトの試合は冬が忙しいからな。』
  『観戦すんのが、だよな?』

同じやり取りへと誘導されかかってると気がついて。
「……………。」
お口が固まってしまった自分へと、

  「〜〜〜〜〜。////////

ハメられたっと怒ってやがる。
こんな素早くピンと来る小学生なんてのは、
いくら“今時”探してもそうはいねぇと思うんだがな。
判った、判ーかったってば。
気持ち良すぎだから“頬擦り攻撃”はもう止めろっての。
四月んなったら賊大の練習に混ざりに行くから、
春休み前でよけりゃ二月でも三月でも、
スキーでもスノボでも連れてってやっからよ。

  「あ、でもウィンタースポーツなら阿含に連れてってもらうからいい。」
  「あ"?」

言ってなかったっけ?
阿含はウィンタースポーツ大好きで、だから年中あんな色黒なんだぜ?
スノボじゃあ関東大会で………


  「だ〜〜〜〜〜っっ!!! うるせぇよってのっ!!」


  お後がよろしいようでvv



  〜Fine〜  07.1.17.

  *何だか こないだの遅寝の話の続きみたいになりましたな。
   ルイさん、推薦入学で賊大に受かったと、
   さりげなく言いたかっただけのお話でございます。
(こらこら) 

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